学力判断の基準とされがちな偏差値、必ずしもあてにならない!
毎年春になると中学受験~大学受験と様々な学校の新しい偏差値表が発表されたりします。
私達日本人はどうしてもこの偏差値と言うものを気にしがちですが、そもそも偏差値とはそこまでシンプルに信じてよい指標なのでしょうか?
今日はこの偏差値で相手の頭の良し悪しを簡単には判別できない理由を話していきたいと思います。
これは、人を偏差値で判断してはいけないとか、頭の良し悪しはIQやEQの方が判断しやすいとか、そういう部類の話ではありません。
純粋に偏差値は母体によって違うこと、偏差値と優秀な人材の割合は合理的に考えても同じ条件でない限り判別できないことを紹介しながら、経営が上手い学校がいかにして見かけの偏差値をあげているのか?という話をしていきたいと思います。
偏差値の求め方と計算方法、標準偏差って何?
偏差値は、「偏差値=(得点-平均点)÷標準偏差×10+50」という式に数字をあてはめることで算出できます。
標準偏差とは、得点の散らばり具合を表すもので、模試や科目などにより異なり、
「(点数ー平均点)の二乗の総和÷受験者数の平方根」によって算出できます。
これだけ聞くと何だそりゃ?ってなりますよね?
こんな感じで、よくわかっていないのに皆が判断の基準にしがちなのが偏差値の怖いところです。
例えば、大手予備校などから例年発表される各学校の偏差値は、どうやって算出されているのでしょう?
予想偏差値
予想偏差値とは大手塾などの模試の際に、受験生の第1・2志望校をもとに、各校の合格ラインを予想するものです。
志望校ごとの受験者の成績や入試の定員など情報をまとめて、偏差値を算出します。
結果偏差値
結果偏差値とは模試の結果と実際の入試の結果をもとに、模試を開催した大手塾などが算出します。
その学校の入試合格者のうち、模試の偏差値がどの程度なら8割以上が合格しているか、という境界線を統計的に求め算出します。
これは80%合格値と言い、塾によっては6割以上の合格者で算出する60%合格値などが採用されることもあります。
学校や塾、あるいはメディアなどで簡単な偏差値が計算できる方法として、
「50+(自分の得点-平均点)÷2」という、標準偏差を使わない公式が広く出回っていますが、この計算方法は正確には正しくありません。
この公式は平均点との差が小さい場合にのみ、正しい偏差値に近い値が出るというだけで、平均点との差が大きい場合には誤差が大きくなります。
偏差値操作に気をつけろ!偏差値だけ見てはならない理由
偏差値は募集団体によって異なる
偏差値が示すのはあくまでその母集団の中での位置づけです。
一番重要でしっかりと理解しなければならないのはこの部分と言えるでしょう。
簡単に言うと母集団が賢いほど偏差値は低めに出ます。
よく、首都圏の中学受験と高校受験で偏差値は10違う(中学受験の方が低く出る)とか、首都圏の中受塾で言えばSAPIX偏差値は他塾より偏差値10低く出て、首都圏模試は10高く出るなんて言ったりします。
大学受験でも私立の実質偏差値は国立より10高く出るとか、文系は理系より10高く出るとか言う人もいます。
文理で言うと、文系より理系の方が賢いという話ではなく、上位層はどちらもとても優秀ですが、文系には例えばあまり学力の関係ない音大や芸大や体育大などが含まれたり、母集団の平均学力が様々な理由から下がってしまい、理系より偏差値が高く出る傾向があるのです。
このように、文理だったり、受験科目の少ない私立と多い国公立だったり、異なる母集団の二つの偏差値を一緒くたにするのは全く意味の無いことなのです。
偏差値は操作できる!偏差値操作の手口
上記で述べたように、偏差値は簡単に操作できるので、二つの学校を比べる際には、同じ受験日で同じ入試条件で生徒を募っているのか見極める必要性があります。
以下偏差値操作の代表的な手口を見ていきましょう。
入学意思の無い優秀な人に受験させる
成績優秀で入学意思のない学生を受験させるこのやり方は、以前大阪の大学がやって問題になったことがあります。
偏差値は学力の高い人が数多く受けて合格となることで上がりますので、入学していなくても関係ありません。
これによって合格者名簿が入学意思のない優秀な学生で埋めることができ、意図的に一定レベル以下の受験者は落とすことで、結果偏差値が上昇します。
この時不足する合格者は推薦入試や社会人入試、帰国入試などで補い、中学・高校入試なら編入試験の入学者数などで補充することができるのです。
受験日を増やす
受験日をメインの受験日の前後数日離して、腕試しの優秀な受験生を募ったり、風邪などで本番に実力を出せなかった優秀な生徒を拾うことで偏差値をあげることもできます。
首都圏の中学受験では優秀な学校の午後などに受験日を設けて、偏差値をあげている学校もあります。
誰も本命の午後受験日に受ける滑り止め校の受験対策を真剣にはしませんから、優秀な学生であってもこの午後受験の学校に落ちてしまうことがあるわけです。
偏差値は優秀な学生が落ちれば上がりますから、合格レベルを高く設定し、ごく一部の高い偏差値層の受験生だけに合格を出すことで、皆が信じる「偏差値」を意図的に上げることができます。
これは学校側の戦略であり、この日の受験者が誰一人入学しなくても、この偏差値は残り、足りない入学者はメイン受験日である一番偏差値の低い受験日で合格した生徒や、補欠合格者で補うことができます。
受験科目を減らす
受験科目数を減らすことも偏差値をあげるためによく使われる手口です。
例えば英語と小論文のみで受験できる高偏差値の大学には英語好きや帰国子女などがこぞって受験します。
7科目バランスよく平均偏差値65のAさんと英語のみ持ち偏差値70で7科目の平均偏差値は50のBさんがこの一科受験の学校を受けた場合、Aさんが落ちてBさんが受かることがあるわけです。
このように1科目受験の学校偏差値と7科目受験のそれとを比較しても意味が無いのです。
一般入試枠を狭める
大学入試で最近よく使われる手口ですが、AO入試や推薦入試の枠を広げることで一般入試枠を狭め、受験予備校が偏差値比較に用いる入試日の定員を絞り込むことで、意図的に偏差値を操作することもできます。
他にも指定校推薦や公募推薦、社会人入試等の枠を増やすことで一般の枠が狭くなり、倍率が上がることで偏差値をあげることもできます。
まとめ
いかがでしたか?偏差値過信に注意しなければならない理由がお分かりいただけたでしょうか?
大学受験はそこで最終学歴となってしまうことが多いので、受験教科数の少ない有名私立大学などに絞って勉強することで効率的に偏差値をあげることができ、お得な感じはします。
しかし、中学受験や高校受験で、見かけ偏差値が高いのに中身の無い学校に誤って入学してしまうと、思いのほか同級生のレベルが低く、大学受験で苦労してしまうのは間違いないでしょう。
また地方の偏差値と首都圏の偏差値では比較対象にならないことも注意しなければなりません。
首都圏は学校が多いので、例えば中学受験で偏差値55の学校には偏差値55前後の子供が、トップ校である偏差値70の学校には偏差値70前後より上の子が集まります。
一方で、ある地方都市で偏差値55のトップ校があったとします。
その街にはそれ以上の偏差値の学校が無いとすれば、その学校にいるのは主に偏差値55から偏差値70より上の子まで上限無くいることになるのです。
この場合も首都圏の偏差値55の学校と地方の偏差値55の学校を比べる意味が無いことがお分かりいただけるでしょう。
このように偏差値の数字だけで安易にその学校の卒業生を優秀か否かと判断することは、正確には正しいとは言えないのです。
社会に出たら正直学歴はあまり意味がありません。
しかし、ついつい学歴や卒業学校の偏差値を気にしてしまいがちな人が多いのも事実です。
そういう時に注意しなければならないことは、その偏差値はどの母体で計算されているか?複数の偏差値を比較する場合は、その偏差値の母体は同じ条件なのか?・・・ということに気をとめなければなりません。
偏差値を見て学校を判断する場合は是非このことに注意して志望校分析を行ってみて下さい。