塩抜きテクニック、呼び塩、迎え塩って知ってる?
浸透圧を上手に利用している料理の手法
先日、梅ジュースの作り方と、梅ジュースは何故氷砂糖を使うのか?についてブログを書きました。表面積の小さい氷砂糖は他の砂糖に比べて、浸透圧で梅の水分がじりじりと時間をかけて抜けていくため梅のエキスが綺麗に抜けて美味しくなる、というものです。
この梅ジュースの原理と呼び塩、迎え塩の手法は、じりじりと時間をかけて浸透圧を利用する、という意味でとても似ています。呼び塩、迎え塩(誘い塩という人もいる)は、真水ではなく塩分濃度1.0~1.5%程度の塩水に塩気の強い塩漬けの食品(カズノコの塩漬けなど)を浸して、時間をかけてゆっくりと塩抜きをしていく料理の手法です。
数の子など水じゃなく塩水で塩抜きをするのは何故?
水で塩抜きをすると?
浸透圧の概念から、例えばカズノコの塩漬けなどは、塩水につけるよりも真水に浸けたほうが早く塩が抜けそうな気がします。しかし実際のところ、いきなり真水に浸けてしまうと、カズノコをはじめ、食材は無数の細胞が繋がってできているので、急な浸透圧によって強く水を吸って膨張してしまいます。
するとカズノコの表面の細胞が風船のようにパンパンになり内部の細胞に水が浸透しにくくなってしまうのです。膨らんだ細胞が、壁になって、水の侵入をガードしてしまい、内部の細胞からは塩が抜けず、表面の細胞からは、塩だけではなく、うま味まで抜けてしまうという、良くない結果になってしまうのです。
塩水で塩抜きをすると?
カズノコ全体をバランス良く塩抜きするためには前述したように、1.0〜1.5%の塩を加えた塩水を用います。塩水の方が時間はかかりますが、内部の細胞の塩を引き出せるのでそのために行うのがこの呼び塩、迎え塩です。
しかし呼び塩、迎え塩にはもう一つ効果があります。塩蔵品に含まれている塩には、ニガリが含まれています。ニガリとは、海水に含まれているもので、豆腐を固める凝固剤として用いられていることで有名な成分で、塩化マグネシウムや、塩化カルシウムのことです。
ニガリというのは苦味やエグミとして感じられるため、塩抜きの際に、これも合わせて抜いてやることが望ましいのですが、ニガリ成分(塩化マグネシウム、塩化カルシウム)は塩(塩化ナトリウム)よりも抜けるのに時間がかかるという特徴があります。
そのにがり成分が抜けていく時間と、塩分が抜けていく時間の時間差の調整が丁度良いとされているのが、この塩分濃度1.0〜1.5%なのです。この濃度の塩水を呼び塩、迎え塩として使うことで、濃すぎる塩分も、ニガリ成分もちょうどよく抜け、一方で必要なうま味は抜けないようになるのです。
まとめ
いかがでしたか?貴方は呼び塩や迎え塩の手法を使って塩抜きをしたことがあるでしょうか?私は濃すぎる塩鮭などはこの手法で塩抜きするようにしています。
実は料理初心者の頃はこの手法を知らず、真水に浸けて塩抜きしようとしてしまったため、ぶよぶよで旨味の無い鮭にしてしまい、後日この手法を学びました。
料理が得意な人にとっては知ってて当然の塩抜きの方法ですが、その科学的原理まで突き詰めて理解している人は少ないのではないでしょうか?大した原理ではありませんが、この塩抜きにベストな塩分濃度に、深い意味があるというのは雑学としては面白いなと思い今回ブログにしてみました。
自由研究や科学への理解のきっかけにもなると思うので、子供と一緒に色々話しながら料理していくこともお勧めいたします。