子供が養子であることを隠さない文化
先日Show and Tell の記事で娘のクラスメートの4歳の女の子が、ハイチ地震の孤児である自分の出自について皆の前でプレゼンした話を書きました。
これは私にとって、あまりにも全てを隠さず受け入れていくアメリカのスタイルに驚きと文化の違いを感じた衝撃的な出来事でした。
肌の色が違うなど外見的な理由で隠さないと思っていた私。
しかし一方で、肌の色や髪の色、目の色などがもともと違う人が多い国であるため、養子である事実など隠そうとしても隠し切れない部分があるから公にしているのだろう、と初めは思っていました。(このクラスメートのジュリアンナはハイチ地震の孤児であり、浅黒い肌の子供であったのに対し、養父母はともに白人であったため一目で本当の親子でないことはわかりました。)
ところが後日、別のクラスメイトの男の子の誕生会に呼ばれた時、やはり純粋に日本との文化の違いがあるのだなと気づきました。
外見が同じ人種であっても養子を隠したりしていない
クラスメイトのジェフの誕生会の招待状と一緒に、娘は嬉しそうにこう言いました。
「誕生会にはジェフの本当のお父さんとお母さんが来るって…だからジェフは今からとても楽しみなんだって!」
彼女がそういった時、一瞬意味が分かりませんでした。しかしよくよく聞くと、私が彼の父母だと思っていた人は彼の祖父母で彼の本当の父母はまだ10代の若者だというのです。彼等はともにカリフォルニアに住んでいてまだ大学生なので籍はいれているものの子供は祖父母が育てているとのことでした。
ジェフは4歳でしたから一体いつ産んだ子供なのか!?という驚きとともに、育てれる人が育てればいいのよ、子供が欲しい人はいっぱいいるんだから…というアメリカ流のおおらかな子育てに驚きを隠せませんでした。実は後日日本人のママ友とその話をしていたら、彼女の周りにも全く同じような子供がいるというのです。そして本人も物心ついた時からそれを知っていて周りも隠す気なんか全く無いそうなのです。
日本だったらどうだろう?
日本にも恐らくそのように未成年で出産した若夫婦の事例はあるかと思います。しかし多くの人がその事実を世間には隠しているのではないでしょうか?養子であった場合だけでなく、このように育ての親が祖父母や親せきであった場合でも、日本では公にせず、ある一定の年齢になるまで隠している場合が多くみられます。
それでは何故隠すのだろうと考えた時、真実を知ったら子供が傷つくのではないか?という思いやりの心があるためだと思います。また何故傷つくと思うのか?と深掘りした場合、日本人は血統主義、親と子は血を分けているものだという思いが強すぎて、そうでないことがわかった時に子供が傷ついてしまうのではないかと心配するのでしょう。
しかし私はアメリカでこれらの子供を見ていて、隠さないで事実を教えて育てても十分な愛情をもって育てていれば、素晴らしい親子関係は築けるのではないか?と感じるようになりました。そしてそれを確信する出来事がこのジェフの誕生会の数か月後におこりました。
親子の関係は何も変わらないのだなと思った出来事
我が家のアパート(日本でいうマンション)には住人専用の屋外プールがあり、傍らにはバーベキューができるスペースがありました。夏のある日、その日は幼稚園の仲の良いお友達を呼んでプールパーティを開催することにしました。
皆が次々とやってきてプールサイドに集まりました。水着を服の下に着てきていた子供もいましたが、まだ着替えていない子もいたので、まだの子は更衣室で着替えるように案内しました。この時、殆どの子がすでに水着を着ていたのでそのまま服を脱いでシャワーを浴びてプールに飛び込んだのですが、前述のハイチから来た養女であるジュリアンナはまだ水着を着ていなかったので直ぐに皆と遊べませんでした。
プールサイドで急いで着替えればいいと言うジュリアンナに対して、彼女のママは、女の子が人前で裸になってはいけません、立派な更衣室があるのだからここで着替えましょうね、と諭しています。子育てをしていたら、あるある事例なのですが、彼女はそれでぐずってしまい、だんだんと興奮して泣き出してしまいました。
ママなんか嫌い!意地悪言って!…ママなんか本当のママじゃないんだから!!!
彼女がそう叫んだ時、私はドキリとしました。
しかし、ジュリアンナのママは私の方を向いて、大声出してごめんなさいねジュリアンナは興奮しちゃったみたい。と一言言うと子供目線に屈みこんで、一生懸命ジュリアンナの話を聞いています。言葉にならない小さな子供の声を彼女が努力して拾おうとしているのがわかります。
私は何となく気にして直視しないように、更衣室の彼らに見えない場所から鏡越しでその様子を見ていました。ジュリアンナは徐々に泣き止んで平静を取り戻しました。
その次の瞬間、彼女は彼女のママに抱き着いて言いました。
ママ、ごめんなさい。I love you…
ジュリアンナのママはたっぷり10秒くらい彼女をハグすると、何もなかったかのように着替えて笑顔で出てきました。
この経験から感じたこと
子供がぐずって、ママ嫌いと叫んで、ごめんなさい、やっぱりママ大好きだよと言う。…子育てをしている人なら一度は遭遇する日常の出来事です。この親子と普通に血のつながっている親子…何か違うのかな?何も違わないんじゃないかな?私は強くそう感じました。
十分な信頼と愛があれば、素晴らしい親子関係は築けるのだ…私がそう確信した出来事でした。