いつが食べごろ?追熟と果物の関係
暑い季節になりました。今は冷蔵庫でキンキンに冷やしたフルーツが格別に美味しく感じられる時期ですよね。今日はその果物の話をしたいと思います。
果物は、食べごろまで追熟してから食べるべき果物と、収穫したらすぐに食べた方が良い果物の、大きく分けて二つのタイプに分けられるということをご存じですか?今回はその果物の食べごろとエチレンガスについて話をしていきたいと思います。
食べごろまで追熟を待った方がいい果物
収穫してからすぐに食べるのではなくて、追熟してから食べごろを見極めて食べた方が美味しいものに、リンゴ、キウィ、桃、マンゴー、アボカド、トマト、ナシ、バナナなどがあります。因みにこの熟すまで待たなくてはならない果実を科学用語で、クライマクテリック型(クリマクテリック型)といいます。
購入するとすぐに食べた方がいい果物
一方で、収穫するとどんどん鮮度が失われていく、購入したらすぐに食べた方が良い果物もあります。代表的なものは、いちご、ブドウ、みかん、サクランボなどでしょうか。これらは新鮮なうちに早めに食べるのが良い果実です。この買ってすぐに食べることのできる果実を「非クライマクテリック型」といいます。
クライマクテリック(climacteric)の意味は「危機的、転換期」という意味です。成熟が劇的な果実を「クライマクテリック型」、成熟が劇的でない果実を「非クライマクテリック型」と呼んで果実の熟し方を表しているのです。
クライマクテリック型とエチレンガス
果実の成熟に作用する、エチレンという植物ホルモンを聞いたことがある人も多いかと思います。クライマクテリック型の果物が熟成すると、エチレンの発生量が1000倍以上も増大し、呼吸量が2~5倍増え、風味、色、軟らかさも急激に変化します。これを「追熟」といいます。
クライマクテリック型の果物は、放置しておくだけでどんどん甘くなります。果実の中に貯蔵されているでんぷんが、追熟により、糖へと酵素分解されることで、甘みが増すからです。しかし、熟成がピークに達すると、風味なども急激に落ちていきます。また、クライマテリック型の果物は追熟できるため、未熟で硬い状態での収穫が可能で、輸送の際に起こる果実の損傷を軽減できるというメリットもあります。
クライマクテリック型の果物は食べごろを早めることもできます。リンゴなどエチレンの発生量が多い果物を近くに置いたり、袋の中に一緒に入れることで追熟を促すことができ、クライマクテリック型果実でクライマクテリック型果実を追熟することが可能なのです。
エチレンガスの3つの性質
エチレンガスには追熟を勧める性質がある
エチレンガスの代表的な作用は追熟を速める性質です。先ほど述べたように、バナナやキウィやマンゴー、リンゴなど、エチレンガスが追熟に作用する者同士(クライマクテリック型果実同士)を一緒に保存すると、食べごろ迄の追熟を速める効果があります。
エチレンガスには老化や劣化を勧める作用がある
追熟を促す作用がある一方で、エチレンガスはものによっては老化や劣化を速めるリスクがあります。ブロッコリーやホウレン草、レタスなどの横にエチレンガスの出るリンゴなどを置いておくと老化が早まり黄色くなったりします。
エチレンガスとジャガイモの発芽抑制
また、エチレンガスでジャガイモの発芽抑制ができると聞いたことがある人も多いかと思います。じゃがいもの芽にはソラニンという毒素が含まれており、調理するとき取り除かなくてはいけません。このじゃがいもの発芽もエチレンで抑えることができます。ですから、リンゴなどエチレンを発するクライマクテリック型果実と一緒に保存するだけで、じゃがいもの発芽を抑制することができるのです。(因みにパイナップルは発芽しやすくなったりと、エチレンの発芽に対する効果は物によって違うことに注意が必要です。)
青果物のエチレン生成量と感受性や貯蔵条件には個体差があります。野菜や果物個別の細かな条件を知りたい方は以下のホームページからダウンロードできるので是非参考にしてみてください。
まとめ
いかがでしたか?果物や野菜の保存って組み合わせを考えだすととても難しいですよね。ジャガイモとリンゴを一緒に保存したら発芽抑制になってよいとわかっていても、野菜室に他にブロッコリーなどもあったらリンゴのエチレンガスで劣化が進む原因になったりするわけですから、考えだすときりがありません。因みにリンゴとジャガイモだけビニールに密閉してしまうと呼吸を妨げることになり、それはそれでよくないそうです。
最終的にはやはりエチレンガスの生成量、感受性と作用、などを個別に詳しく理解しておくことが重要なのかもしれません。
特にエチレンガスは追熟について詳しく理解しておくと美味しく果物が食べれるので意識して保存することをお勧めします。