フィルターバブルとは
皆さんはフィルターバブルという言葉をご存じですか?フィルターバブルとはWikipediaによると、「インターネットの検索サイトが提供するアルゴリズムが、各ユーザーが見たくないような情報を遮断する機能」(フィルター)のせいで、まるで「泡」(バブル)の中に包まれたように、自分が見たい情報しか見えなくなること。と定義されています。
この言葉はインターネット活動家であるイーライ・パリサーが2011年に出版した同名の題の著書『The Filter Bubble』(邦訳『閉じこもるインターネット』)の中で作ったものです。この本によると、ユーザーは次第に自分の考えと対立する観点の情報に触れることができなくなり、自分自身の情報皮膜(バブル)の中で知的孤立に陥るといいます。
つまり簡単に言うと、AIの進化に伴いインターネット上で自分の見たい情報だけ見ると言うフィルターがかかってしまうため、いつの間にか自分の視野が狭くなるという現象です。
フィルターバブルの様々な弊害
フィルターバブルの問題点
フィルターバブルの問題点は大きく分けて3つあります。
一つ目はフィルターバブルが目に見えないということです。TVなどのチャンネルは自分の意志で選択しますが、検索エンジンによって表示された結果は、なぜそれが選ばれたのかその根拠が明確に示されることはなく、表示された情報が偏向のない客観的真実であるのかすらわかりません。
二つ目は自分のフィルターバブルの中には自分一人しかいないということです。自分にパーソナライズされた情報バブルは他の人の情報バブルとは違うので、個々にその中で孤立してしまうリスクがあるのです。
最後に、三つめの問題点は、フィルターバブルの内側にいることをユーザー自身が選んだわけではないということです。テレビや新聞、雑誌を視聴する際、どのようなフィルターを通して世界を見るのかをユーザーは自ら能動的に選んでいますが、ネット上のパーソナライズされたフィルターの場合、自ら選択してそれを使用しているのではなく、気付けばいつの間にか情報が偏っているということがおこりうるのです。
フィルターバブルの危険性
沢山あるサイトの中で、自分の欲しい検索結果が返って来るようなアルゴリズムを持つwebサイトほど、良いwebサイトだとユーザーに評価されるので、各サイトの検索アルゴリズムはその方向で進化したのですが、自分の欲しい検索結果ばかりが返って来るようになると、最終的には、自分の見たい情報以外をインターネットで見ることが出来なくなってしまうという危険性が生じます。
そして、自分の観点に合わない情報から隔離され、同じ意見を持つ人々同士で群れ集まるようになり、それぞれの文化的・思想的な集団の中だけに孤立するようになっていきます。
まるで「エコー・チェンバー」(自分で発した音が、あらゆる方向から反射して自分の方に返ってくる、音響の実験室)にいるかのように、あらゆる方向から自分と同じ意見が返ってくるような閉じた空間にいた結果、単に自分の意見が増幅・強化されるだけとなる「エコーチェンバー現象」を引き起こすことにもなると言われています。
フィルターバブル対策
このフィルターバブルによる弊害ですが、対策としてプライバシーモードまたはプライベートブラウジングモードを設定するというやり方があります。
これらは一部のプラウザに搭載されている機能で、サイト閲覧後に履歴やcookieなどの記録を自動で削除し、プライバシーに関わる情報を保護する機能の総称をいいます。通常、ウェブブラウザは接続履歴に加え、画像や動画やテキストなどをキャッシュに格納していますが、これらのモードを使用した場合、選択されたセッションの間のみ、これら履歴情報の保存を無効化します。
本当にAIによる先回りの情報提供を嫌う人はこのプライバシーモードまたはプライベートブラウジングモードを設定するのが一番でしょう。またDuckDuckGoの様な利用者のプライバシーの保護と利用履歴等を記録保存しないことを運営方針としている検索エンジンを使うのも一つのやり方です。
情報のパーソナライズ化のメリット
デメリットばかり述べてきましたが、フィルターバブルの原因である、情報のパーソナライズ化にも当然メリットもあります。
それは、やはり「便利さ」ではないでしょうか。SNSや動画視聴でも、一度検索したりお気に入り登録をしたりしただけで、どんどん自分に合いそうなトピックを流してくれますし、お勧め情報が出てくることで、興味関心を深く追求することができます。
例えば私は最近米国株情報をYoutubeで見ているのですが、視聴初期の頃、どのYoutuberが自分の欲しい情報を伝えているのか探る際、このおすすめ機能が大変役に立ちました。膨大にあるコンテンツの中から自分の好みにぴったりな情報を見つけるのは、自分で探すよりAIに頼った方が圧倒的に速くて正確なのです。
結局どうすべきか
以上のことをまとめると、フィルターバブルの原因である、情報のパーソナライズ化のメリットは「圧倒的な検索速度とその利便性」であり、一方でデメリットは「視野が狭くなること」です。
先日私は「映画 えんとつ街のプペル」を見に行った話を書きました。この映画の感想をリサーチしていくうちに、評価者の意見が極端に分かれていることに気づきました。この映画を肯定する人にはどんどん肯定派のフィルターが、否定する人にはどんどん否定派のフィルターがかかっていくためでしょう。こういう時に大切なのは、両方の意見にキチンと目を通して、かつ人の意見だけで判断せずに自分の目で見て判断するということです。つまり、積極的に逆の意見をググってリサーチし、両方の意見を参考に自分の考えをまとめるのです。
自分の欲しい情報をAIが選別して次から次に出してくれるシステムはとても便利です。
しかし、それにただ身をゆだねていたらいつの間にか自分の視野はとても狭くなってしまいます。自分の考えと逆の意見などを意図的にリサーチしていくことで、AIがあなたを広い情報を知りたい人だと認識し、その情報の幅を広げてくれます。
フィルターバブルを取り払うためにプライバシーモードまたはプライベートブラウジングモードを設定するのも一つの考え方ですが、利便性を捨てきれない方は、自ら自分と逆の考え方をリサーチし、情報の幅を広げる意識を持つことが大切になるでしょう。