何故かお肌の皮膚呼吸が大切と思っている人が多い
間違いだらけのネット情報
皮膚呼吸について訴求している化粧品は買うな!そもそもその訴求はおかしい!
いきなりどうしたの?と言われるかもしれませんが世の中に、ファンデーションで皮膚呼吸を妨げると不健康になる~とかクリームの塗り過ぎは皮膚呼吸をさまたげるので苦しくなる~とか平気で書いているサイトって多くないですか?
個人のブログならまだ許されるのですが、職業看護師と書いている人のブログだったり、もっとひどいのはコスメ会社のホームページだったり、流石に未だ医者でそんなこと書いている人には遭遇したことが無いのですが、世の中の人が信じてしまう可能性のあるサイトなどでたまにヒトがガッツリ皮膚呼吸をする生き物かの様な記載を見ることがあり驚きます。
ヒトの皮膚呼吸なんて、ないと思っていい程度のもの
哺乳類は皮膚呼吸をしない、と覚えてしまって構いません。何故遠回りな断定をするかというと、0.6%くらいはすると言われているからです。ただ数字を見ていただいたらわかるように体に対する影響は良くも悪くも全く無いと言えるのです。
皮膚呼吸をする生き物もいるがヒトには関係ない話
体に影響があるほどの皮膚呼吸をするのは主に両生類です。両生類は30%から70%と状況に応じて皮膚呼吸をします。特別な呼吸器官をもたない動物は皮膚呼吸に頼るものもいます。例えば環形動物のミミズなどが良い例です。
しかし哺乳類や鳥類はほぼ皮膚呼吸をしません。私はこれをウン十年前の中学受験の頃に学びました。勿論、中・高・大学と当然の常識だと認識して育ったのですが、世の中の一定の人がヒトがガッツリ皮膚呼吸をすると思っている…と気付いたのは社会人になったばかりの頃です。
学歴の高い人でも専門外だと誤解することがある
当時付き合っていた彼氏が、皮膚呼吸を妨げると苦しくなるからクリームを塗って寝たことが無い…という発言をしたのです。私は心底驚きました。何故なら彼は弁護士でいわゆる超がつくエリートだったからです。そんな学のある人が本気でクリームを塗ったら皮膚呼吸が阻害されて苦しくなると思っているのならいったいどれだけ多くの人が誤解しているのだろう?いわゆる理系でない人(理系でも専門外の人)は皆ヒトがそんなに皮膚呼吸をしていると思っているのかしら???
当時私は彼にヒトは皮膚呼吸をしないよ、皮膚呼吸をする脊椎動物は基本的には両生類だよ…と言ったのですが、全く信じてくれませんでした。(因みに0.6%ほど皮膚のほんの表面で皮膚呼吸をするという説がでたのはその後のことです。)
じゃあなんで皮膚呼吸を妨げない化粧品とか売っているんだ?とか『007ゴールドフィンガー』(1964年)という映画で、ボスを裏切った女性が全身に金粉を塗られて皮膚呼吸できなくて殺された場面があるとかなんとか言われ、挙句の果てにこっちを学のない人呼ばわりです。
あまりに人の話を信じないので仕方なく、当時の日本皮膚科学会のホームぺージに、ヒトが皮膚呼吸をするかのような切り口で販売宣伝されている化粧品等があるが間違いである。人は肺呼吸をするものであり当然皮膚呼吸などしない。と記載されていたので、それを見せるとようやく納得してくれました。
まとめ
皮膚は重要な排泄器官でもあるので汗に強いとかそういう意味で化粧崩れしにくいという訴求の化粧品は問題ないと思いますが、皮膚呼吸を妨げないので良い、という化粧品の訴求はとんちんかんな訴求です。全身べったり化粧品を塗ったところでヒトの呼吸が阻害されることはないからです。
流石に大手の化粧品会社にはそのような訴求をしているところは皆無ですが、たまに聞いたことが無いような小さな会社でそのような訴求をしているところを見かけると、まともなレベルの研究者がいないのだろうな?と感じてしまいます。ヒトの皮膚呼吸に対する訴求はその会社のレベルを見極める一つのポイントになるのではないでしょうか?