お菓子作りをしていて、これは失敗したと感じた経験
料理やお菓子作りをしていて、これは失敗したなという経験は誰にでもあるかと思います。砂糖を入れ過ぎて甘い、とか、醤油を入れ過ぎたのでしょっぱいとか、大抵の場合その失敗は理由がわかりやすいものです。
しかし殆どの場合はその後少し他の調味料を入れたり、水で薄めたりしてバランスを取れば意外と美味しく仕上がったりします。
しかし私は一度だけ、何故こんなものができたのか???残念さよりも驚きが先に来てしまった失敗をしてしまったことがあります。それがアメリカで作った手作りクッキーです。
日本のクッキーに比べて随分と甘いアメリカのクッキー
アメリカで手作りクッキーを作ろうと思った理由
私がアメリカでクッキーを作ろうと思った理由はアメリカのクッキーが甘すぎたからです。日本ではクッキーは大抵パティスリーで買っていたのですが、アメリカのクッキーは当初、どこで買っても甘すぎてなかなか1枚以上は食べることができませんでした。
恐ろしいことにその甘みにもその後じりじりと慣れていってしまうのですが(そのことは以前記事にしましたが)、アメリカに来て間もない頃は、色んなものが甘すぎて食べれませんでした。私は娘のために日本のクッキーの様に甘さ控えめのものを作ろうと、インターネットで日本のクッキーレシピを探し作ってみることにしました。
日本とアメリカのレシピを二つ並べてみながら食材をそろえてみた
私は念のため、アメリカの有名なクッキングサイトからアメリカのレシピも拾ってきて比較してみたのですが、日本のレシピに比べて入れる砂糖の量が恐ろしいほど多くて驚きました。
これは絶対に日本のレシピで作らねばならないと思い、スーパーで購入する材料を英語でメモしていきました。Sugar砂糖、butterバター、flour小麦粉(薄力粉)、egg卵、milk牛乳、 baking sodaベーキングパウダー。。。
中でも薄力粉とベーキングパウダーの英単語がよくわからなかったので、英語のサイトと比較して薄力粉はAll-Purpose Flourでよいみたいだな、ベーキングパウダーはきっとこのbaking sodaのことだろう、と勝手に予想を立てて材料を購入しました。
早速作って焼いてみると・・・
材料を買ってきてレシピを見ながらこねて、オーブンで焼いて、一口食べたとたん、私は初めて自分が作ったものを、オェっと吐き出しました。
ナニコレ???
信じられない苦いシロモノです。見た目は綺麗でおいしそうなバターの香りもするし、焦げていないのに、何故か苦くて食べれたものでは無いのです。
私はもう一度英語のレシピと日本語のレシピを比較しながら材料を並べてみました。その時気づいたのです、・・・あっ!ベーキングパウダーは英語でもbaking powderなんだ!じゃあbaking sodaってなんだっけ?どこかで習ったような気もします。辞書で引いてみると重曹と書いてあるではありませんか。
ベーキングパウダーとベーキングソーダの違い
ベーキングソーダ(重曹)とは?【掃除用重曹と食用重曹は区別しよう】
ベーキングソーダの構成成分は、炭酸水素ナトリウムです。別名、重炭酸ソーダとも呼ばれ、それを略して「重曹」といいます。ベーキングソーダよりも重曹の方がピンとくる日本人は多いのではないでしょうか?
重曹は加熱されると炭酸ガスを発生させます。そしてこのガスが生地を膨らませるのです。
因みに重曹と言えば掃除用重曹が有名ですが、食用重症と掃除用重曹は精製度合いが異なるので必ず食用重曹を使うようにしましょう。
ベーキングパウダーとは
一方で、ベーキングパウダーの成分は、三つの要素で構成されており、それぞれ異なる働きを持ちます。
- 一つ目が、ベーキングソーダを構成する炭酸水素ナトリウム(炭酸ガスを発生させる。)
- 二つ目が第一リン酸カルシウム(炭酸水素ナトリウムと反応してガスを発生させ、生地がアルカリ性になるのを防ぐ酸性剤)
- 三つ目が、コーンスターチ(保管中に炭酸水素ナトリウムと酸性剤が反応しないようにする遮断剤)です。
ベーキングパウダーは水を加えた時と加熱時の二回、炭酸水素ナトリウムと酸性剤の反応が起こり、炭酸ガスが発生します。ベーキングソーダが焼かれるまでガスを発生しないのに対し、ベーキングパウダーは調理の過程で水と反応しガスを発生するのです。
ベーキングソーダとベーキングパウダーは置き換えれない(代用不可)
そして、化学式上、この二つは成分が異なるため発生する炭酸ガスの量が違い、そのままの分量では置き換えることはできません。
また分量を変えて膨らむ割合を同じにしたところで、この二つは風味がかなり異なります。ベーキングソーダで焼いたものはベーキングパウダーのそれに比べて焼き上がりが黒く、苦みとしょっぱさが合わさったような何とも言えない微妙な味です。
糖分と苦みのバランス、甘さが苦みに勝つ瞬間
なるほど、さっきのクッキーの苦みはこのベーキングソーダの苦みなんだな…と納得しながらも私はここで一つ不思議に思いました。アメリカのクッキーを苦いと思った事が一度も無かったからです。
次の瞬間、私はふと気づいてゾッとしました。若しかして、苦みに気づかないくらい甘みが強いから、アメリカのクッキーを苦いと思わなかったのではないだろうか?チョコレートは砂糖なしでは苦いけれど大量の砂糖を入れているので苦みを感じなかったりするのと同じように、甘さは苦みに打ち勝ってしまうのかもしれない。
味覚に敏感な日本人は、クッキーを焼くときに、多すぎる砂糖を減らすことで苦みが出てしまうことを問題視し、砂糖を減らしてべーキングパウダーを使い、雑味や苦み味を消すというレシピを開発したのでしょう。
まとめ
いかがでしたか?ベーキングソーダとベーキングパウダーがいかに違うものかわかっていただけたでしょうか?そしてアメリカのクッキーにはベーキングソーダの雑味や苦みまでをも打ち消してしまうほどの大量の砂糖が入っているのだということがご理解いただけたかと思います。
一方で、ベーキングソーダでクッキーを焼くことには利点もあって、ベーキングソーダはベーキングパウダーと違って加熱するまでガスを発生しないので、クッキーだねをたくさん作って冷凍したりすることもできます。ですから、甘い甘いクッキーが好きで、たくさん作って好きな時に焼けるように冷凍しておきたい人などは、アメリカ流にベーキングソーダ(重曹)でクッキーを焼いてみるのも一つのてかもしれません。
大事なことはベーキングソーダとベーキングパウダーの違いと性質をよく理解し、ベストな使い方をすることだと思います。